QSLカードとは、アマチュア無線家同士が確かに電波を届かせ交信したことを証明し、成果を文書化して残すため、交信相手に発行するカードのことである。交信証明書とも呼ばれる。
QSLとは、Q符号で「こちらは、受信証を送ります。」という意味であり、意訳して「送信内容を了解しました。」という意味で用いられる。 日本アマチュア無線連盟(JARL)ではその大きさを、長辺で14cm以上15cm以下、短辺で9cm以上10cm以下と規定しているため、日本国内でははがきと同じ縦148mm×横100mmまたはこれより数mm小さいサイズが一般的に用いられる。
法的にQSLカードを発行する義務は無いが、アワードの申請などで確かに交信した事を証明するために必要とされる場合もあるため慣例的に交換する事が多い。一方で、作成する手間、印刷代、郵送料、転送料金、等を相手局に負担させる事になるので、無理に要求すると敬遠される事になる場合もある
IARU 国際アマチュア無線連合にも、受信者が望んでいない大量のQSLでシステムが溢れかえっている事、大量の紙QSLカードよる環境への配慮がない事、若年者は高齢者ほどQSLに執着しておらず辟易している事、等々についての苦言が掲載されている。
インターネットが普及してからは、各局がログを入力するだけでインターネット上で突き合わせ即時に確実に証明やカード画像の交換が行えるサービスが多数開発され、作成する手間もかからず、国内外の分け隔てなく誰でも基本無料で利用できる物が多く、配送を待つ必要もないためそちらに移行する局が増えている。大量のカードを簡単に検索でき、PCだけでなくスマートフォン等でも簡単に閲覧できる等メリットが多い。
アマチュア無線の定義さえもなかった黎明期からの慣習である が、電波がどのくらいの距離をどの程度伝搬したのか交信者同士で検証・確認する目的があったようである。
交信証明書をはがき(カード)にするという考えは何人かのアマチュア無線家によってそれぞれ独自に考案されたようであり、 確認できる最も古いQSLカードは、1916年、米国ニューヨーク州バッファローの8VXから ペンシルベニア州フィラデルフィアの3TQへ送られたカード である。なお、当時はアマチュア無線の定義さえなく、国際呼出符字列は用いられていなかった。 1919年にオハイオ州アクロンの8UX C.D.Hoffmanが、記載事項を統一したQSLカードの原型を完成させたとされる[要出典]。 ヨーロッパでは、2UV、ビル・コーサム(William E. F. "Bill" Corsham)が1922年にイングランドのハーレスデン(Harlesden)から交信した時に最初にQSLカードを発行した。
最初の10項目は必須であり、欠けているとアワード申請における所持証明の際に無効となる。
世界各国にQSLカードを転送事務を行うQSLビューローと呼ばれる機関があり、それらを経由する方法である。郵便事務と同様に、受け付けたQSLカード受付けを仕分け、転送する仕組みである。
国によってはボランティアにより運営されているケースが多いが、日本ではJARLが会員限定で独占的な運営を行っており、JARL会員以外はビューローを利用できず、国内局同士ではQSLマネージャも禁止とされているためクラブコール宛て等での転送も不可能となっている。しかし、JARLの会費を鑑みても年間約88通以上のQSLカードを交換する場合は後述するダイレクトよりは安上がりである。
現在、コロナ禍における就労者不足などの原因から、半年程度からそれ以上の遅延が頻繁に発生している。交信相手が発送するまでの時間も含めるとニューカマーがJARLに入会,年会費を払っても1年間全く届かずに退会に至るケースも発生している。 特に、FT8が流行り始めてからは総交信数が増加し、より悪化している。
QSLビューローの費用はJARLの年会費から支出されているため、発送数の違いにおける不公平感を訴える声もある。
外国との転送では、数か月から数年もの時間がかかったり、年月の経過とともにQSLマネージャや転送ボランティアが居なくなって未着や紛失となる場合がよくあるため、2010年頃以降は多く場合で後述のインターネットを利用した電子QSLが主として使われている。
郵送等によってQSLカードを送付、もしくは手渡しする方法である。
DXペディションなど珍局と交信した場合、船便を用いるビューロー経由では時間がかかってしまうため、ダイレクトで送付し返信を要求する場合がある。この際に相手に負担をかけないようにSASE(自分宛て住所を書いた切手付き返信用封筒)を用いる。国際的にはSAE(Self‐Addressed Envelope、自分宛て住所を書いた切手のない返信用封筒)+IRC)とする。IRCにかえて米ドル紙幣を同封することもある。なお、日本に於いて一般に通常郵便物に紙幣(現金)を同封することは郵便法違反であるが、外国紙幣は該当しない。相手先国での扱いについては注意が必要である。
かつては郵政省(当時)が無線局情報をJARLに提供し、アマチュア無線局名録(通称コールブック)をほぼ隔年毎に発行し書店で販売していたため、交信相手に直接QSLカードを送付,請求する事ができた。
しかし、社会情勢の変化とともに1990年版を最後に郵政省からの個人情報提供は行われなくなった[要出典]ため、その後はJARL会員情報に基づく会員名簿という形で発行を続けた。
2003年には、個人情報を利用した悪質ビジネスや犯罪の深刻化に伴い個人情報保護法が施行され、第三者への個人情報の提供には利用目的の説明や承諾が必要となったが、JARLは「会員は第三者ではないから個人情報保護法に基づく説明や承諾を行わなくても合法」と解釈し、会員限定として販売を続けた。しかし、住所の詳細など情報の削除にも応じるようにもなったため、局名録を購入しても相手の個人情報が入手できるとは限らなくなった。
よって、そもそもJARL会員同士であるならJARLが運営するQSLビューローを使えばいいため、別料金を払って直接送る意味がなく、郵送での交換は滅多に行われていない。
また、何らかの事情でどうしても急ぎで必要な場合、JARLが運営するコールサインアドレスのメール転送サービスや、JARL会員以外の場合でもTwitter等の開かれたSNSで相手を見つけて連絡する等の方法がある。
国内においては、どちらかがハムフェア等に参加,出展等している場合、手間や時間のかかるビューロへ送らず会場で直接手渡しする事がよく行われいる。支部大会、各地で開催されるジャンク市でも同様である。
インターネット経由で交信を証明し、QSLカードの発行を電子化する試みがある。 このほか、EメールでQSLカードの画像を交換する方法もある。
ビューローを介さないため遅延や紛失がなく、短時間で届ける事ができる。
2021年現在、世界で最も普及している電子QSLサイト。各種ログソフトウェアと連動してQSLを発送する事ができる。単独でも利用する事ができる。
電子ログソフトウェア「ターボ ハムログ」同士で利用できるQSL画像交換機能。Eメールサーバを介して送受信される。
全国のコンビニに設置されている「カラーコピー機」を介して紙カードを送付する試み。
電子QSL局と紙QSL局をスムーズに接続でき、その特性から様々なメリットはあるが現状はほとんど使われていない。
デメリットとしては、現在提供されているサービスでは印刷番号を個別に伝えなければならず、QSOに若干の時間がかかる。
様々な事情により、QSLカードの宛先は必ずしも相手局ではなく、他のアマチュア局が発行を代行することがある。これをQSLマネージャという。特にDXペディションのために特別なコールサインで免許を受けている場合や、無線局の設置場所が僻地等でQSLを発行することが難しい場合に導入されている。
なお、日本ではビューローはJARLが独占運営しており、国内局が他の国内局のQSLマネージャーになることを禁止している。よって、初心者やライトユーザーのQSLをクラブ局等でまとめて取り扱う事も禁止されている。
アワードの申請にあたって、QSLカードによる交信の証明を必要とすることがある。 その際、QSLカード記載内容の必須項目に脱落が無いことが強く求められる。中には電子QSLは認めないというアワード[要出典]も存在する。
SWLとはShort Wave Listener の略であるが、短波に限らずアマチュア無線局の送信を受信、傍受する人のことを示す。 他人の交信やCQ(不特定局の呼出し、特定局の呼び出し)を傍受した人(無線局免許の有無に関係なく、受信、傍受のみを目的としている人)から、「受信報告書」が届く事が有り、これをSWLカードと言う。 SWLカードが到着した場合は、報告内容を確認してSWLカード(受信確認証)の返送を行う。ただし、QSLカードと同様で発行する義務はない。 またSWLカードは、QSLカードの記載事項を一部修正して流用することがある。
BCL(短波による国際放送の受信)を趣味とする人々にも、べリカード(受信確認証)という似ている仕組みがある。
JARLの准員(アマチュア局を開設していない会員)には、コールサインの代わりに記号と番号による准員番号(SWLナンバー)が付与されることで、QSLカードと同様に利用することができる。
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「QSLカードには、自局の運用場所だけでなく相手局の運用場所も記入しなければならない」という人がいるが、これは都市伝説である。
この説を唱える人は「相手局の運用場所の記入を必要とするアワードや距離証明があるから」というが、JARLは「運用場所は自己宣誓するもので相手局が証明するものではない」という理由で相手局の運用場所(申請者にとっては自局の運用場所)の記入の無いQSLカードもアワード申請に有効としている。日本国内のアワード発行者の規程も「特に定めのないものはJARLアワード規程に準ずる」としているのが殆どである。
また、JARLはUHF帯以上で交信距離認定を行っているが、申請にはQSLカードの記載事項に相当する情報以外に、距離、自局と相手局の経緯度および標高、使用した無線機、アンテナなどの詳細な情報が要求され、QSLカードの発行は関係ない。
そもそも、相手局の移動地をQSLカードに記載する場合でも、その内容は交信中に相手局が述べた内容を書くことしかできず、何の証明にもならない。
1972年6月までは、JARL会員から非会員宛ての転送も有料ステッカーの貼付により可能であった。