プロモーション 用写真 (左からグラント 、ラッセル 、ベラミー )
『ヒズ・ガール・フライデー 』(His Girl Friday )は、1940年 にアメリカ合衆国 のハワード・ホークス が監督したコメディ映画。スピード感あふれる台詞を見せ場にする、いわゆる「スクリューボール・コメディ 」の代表作の1つとされる 。ロザリンド・ラッセル 演じる早口で威勢のいいヒルディは、ホークス的女性像 の典型例とも言われている 。1993年にアメリカ国立フィルム登録簿に登録された 。
日本では『レディは敏腕記者 』のタイトルでビデオ化されたことがある。
ストーリー
映画は「新聞記者が殺人以外なら何でもやった古い時代…」というクレジットで始まる。
ウォルター・バーンズ(ケーリー・グラント )は、ニューヨークの大手新聞社で名を馳せている名物編集長。探偵を使った贈賄や窃盗もいとわない強引な手法で次々にスクープ記事を放ってきた。妻のヒルディ・ジョンソン(ロザリンド・ラッセル )は彼の同僚として働く敏腕記者だったが、ウォルターの強引な性格と、常に締め切りに追われる新聞記者暮らしに愛想をつかして離婚・退社。穏やかな性格の保険業者ブルース・ボードウィン(ラルフ・ベラミー)との再婚を決め、ブルースの実家があるオルバニー(ニューヨークの州都)で主婦として静かな暮らしを始めようとしていた。
しかしヒルディがニューヨークを離れる前日、最後の挨拶のためウォルターを訪ねると、ウォルターは様々な策を弄してヒルディの出発を遅らせる。そのころニューヨーク中の記者たちが追っていた大事件、警官殺しの容疑者へのインタビュー記事をヒルディに書かせるためである。
ヒルディは二度と新聞記者はごめんだと言いながら、ウォルターの懇請に負けて留置所へ入り込み、容疑者アール・ウィリアムズ(ジョン・カーレン)への取材に成功する。アールは既に死刑を宣告され、刑の執行を翌朝に控えていた。しかしヒルディは取材するうちに、腐敗したニューヨーク市長が選挙の宣伝に利用するためアールに無実の罪をきせて死刑を強行しようとしていることに気づき、政界の暗部を暴く大スクープの予感に夢中になっていく。
その間、ウォルターはヒルディの戻りを待っている再婚相手のブルースを、でっちあげの軽罪で何度も拘留させ続ける。そしてヒルディと共に記者室で猛烈な取材を開始する。彼らの動きに気づいた市長と保安官(ジーン・ロックハート )は、2人を逮捕するため記者室へ乗り込んでくるが、逮捕の瞬間、メッセンジャー(ビリー・ギルバート )が連邦政府からの死刑執行停止命令を運んでくる。
諦めた市長と保安官が帰って行き、再婚相手のブルースもまたヒルディが結局記者の世界を捨てられないことを悟り、破談を申し出て去ってゆく。
記者室に取り残されたウォルターはヒルディに愛を告白し、ヒルディはウォルターへの愛を再確認して、2人は2度目の新婚旅行を約束して抱き合うのだった。
評価
ケーリー・グラントとロザリンド・ラッセルが早口でまくしたてる場面がほぼ全編を占めており、2人のロマンスそのものよりも、当意即妙な台詞のキャッチボールが映画の中心的な見せ場となっている 。こうした作品をコロンビア ピクチャーズ は1934年の『或る夜の出来事 』の大ヒット以来、繰り返し製作したため、早口の会話は「スクリューボール・コメディ」 の重要な特徴と見做されるようになった 。
ヒルディは自我が強く弁が立ち、新聞社のような男社会でも毅然とキャリアを築いているが、最終的には男の望む場所に落ちつき、男の元へ戻ってくるキャラクターとして描かれている。ハワード・ホークスはこうした女性を自作にたびたび登場させたため、ヒルディのような女性を指して「ホークス的女性(Hawksian Woman)」 と呼ばれるようになった 。
題名の「ヒズ・ガール・フライデー」は「彼のお気に入りの娘」といった意味で、デフォーの『ロビンソン・クルーソー』で忠実な現地人の下僕となった「フライデー」にちなんでいる 。
ベン・ヘクト とチャールズ・マッカーサー の戯曲『フロント・ページ (英語版 ) 』をハワード・ホークス が脚色した作品で、同原作戯曲の映画化は1931年の『犯罪都市 』に続き2度目である 。原作戯曲に対する変更点として、ヒルディを女性にし、ウォルターの元妻としている 。また1974年にはビリー・ワイルダー 監督によって再び映画化されている(『フロント・ページ』)。
キャスト
脚注
^ “My girl Friday, and his, and yours ”. Observations on film art . 2020年5月25日 閲覧。
^ King, Susan (2003年8月13日). “Not just pretty faces” (英語). Los Angeles Times . ISSN 0458-3035 . http://articles.latimes.com/2003/aug/13/entertainment/et-king13 2019年1月3日 閲覧。
^ “Complete National Film Registry Listing | Film Registry | National Film Preservation Board | Programs at the Library of Congress | Library of Congress ”. Library of Congress, Washington, D.C. 20540 USA . 2020年5月25日 閲覧。
^ "overlapping dialogue; overlap dialogue." A/V A to Z: An Encyclopedic Dictionary of Media, Entertainment and Other Audiovisual Terms, Richard W. Kroon, McFarland, 1st edition, 2014.
^ a b "screwball comedy." A/V A to Z: An Encyclopedic Dictionary of Media, Entertainment and Other Audiovisual Terms, Richard W. Kroon, McFarland, 1st edition, 2014.; Philip C. DiMare, "The Romantic Comedy," Movies in American History: An Encyclopedia, ABC-CLIO, 2011.
^ "The Hawksian Woman," Donald, Ralph, and Karen MacDonald. Women in War Films : From Helpless Heroine to G.I. Jane, Rowman & Littlefield Publishers, 2014.
^ 同原作の映画化作品には他に『フロント・ページ 』(1974年)、『スイッチング・チャンネル 』(1988年)がある。
^ 同様の設定変更は『スイッチング・チャンネル』でも行なわれているが役名は異なる。
関連文献
Bordwell, David. "My girl Friday, and his, and yours " (Observations on film art , Jan. 16, 2017)
Goldin, Jay. "The Crazy World of His Girl Friday (1940) " (Bright Lights , Nov. 10, 2016)
Roth, Marty. "Slap-Happiness: The Erotic Contract of ‘His Girl Friday’" (Screen , Volume 30, Issue 1-2, Winter-Spring 1989, Pages 160–175)
外部リンク
1920年代 1930年代 1940年代 1950年代 1960年代 1970年代 オムニバス映画
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