香港語言学学会粤語拼音方案

香港語言学学会粤語拼音方案(ホンコンごげんがくがっかいえつごピンインほうあん)、略称粤拼 (えつピン、Jyutping、ユッピン) は、粤語(広東語)をラテン文字によって表記する方法の一つ。香港語言学学会 (LSHK) によって1993年に制定された。特にコンピュータ処理の分野で支持されており、広東語でのインプットメソッド(粤拼輸入法)として発展している。

利用

粤拼は現在、教育コンピュータにおける中国語での情報処理分野などのさまざまな分野・業界で利用されている。広東語でのインプットメソッドとしても、相当に成熟し発展してきている。香港の他に、台湾でもこの方式を使用した入力システムが販売されている。この方式は、政府、財界、および学術界にて広く認識されている

声母

19の声母が立てられている。

b
/p/
p
/pʰ/
m
/m/
f
/f/
d
/t/
t
/tʰ/
n
/n/
l
/l/
g
/k/
k
/kʰ/
ng
/ŋ/
h
/h/
gw
/kʷ/
kw
/kʷʰ/
w
/w/
z
/t͡s/
c
/t͡sʰ/
s
/s/
j
/j/

韻母

56の韻母が立てられている(うち2韻は鼻音独立韻)。

ø -p -t -k -m -n -ng -i -u
i- i

ip

it

ik

im

in

ing

iu

yu- yu

yut

yun

u- u

ut

uk

un

ung

ui

e- e

ep

ek

em

eng

ei

eu

eo- eot

eon

eoi

oe- oe

oek

oeng

o- o

ot

ok

on

ong

oi

ou

a- ap

at

ak

am

an

ang

ai

au

aa- aa

aap

aat

aak

aam

aan

aang

aai

aau

m
/m̩/
ng
/ŋ̩/
  • mng は単独で音節を構成する鼻音独立成韻「唔」(m)、「」「五」(ng) にのみ使われる。

声調

広東語には九声があるが、入声が3声を占めるので音の高さとしては実質6つであり、1から6までの数字で表記される。1は高く平らに(または、高く下降)、2は高く上昇、3は中間で平らに、4は低く下降、5は低く上昇、6は低く平らにそれぞれ発音する。第7声、第8声、第9声はそれぞれ高中低の高さである。

広東語の6声調。
調名 陰平 陰上 陰去 陽平 陽上 陽去 陰入(上陰入) 中入(下陰入) 陽入
第1声 第2声 第3声 第4声 第5声 第6声 第7声 第8声 第9声
表記 1 2 3 4 5 6 1 3 6
調値 55 / 53 35 33 21 / 11 23 / 13 22 5 3 2
例字
fu1

fu2

fu3

fu4

fu5

fu6

fuk1

fok3

fuk6

fan1

fan2

fan3

fan4

fan5

fan6

fat1

faat3

fat6

関連項目

脚注

  1. ^ a b c 粤語的粤拼和IPA”. 明報 (2010年4月22日). 2021年5月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年9月19日閲覧。
  2. ^ 張群顯 (2014-01). “蔚為大觀的粤拼網上資源”. 中國語文通訊 93 (1): 1-7. オリジナルの2018-12-22時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20181222200509/http://www.cuhk.edu.hk/ics/clrc/crcl_93_1/cheung.pdf. 
  3. ^ 陸勤教授(香港理工大學)、張群顯博士(香港理工大學)、香港語言學學會粤拼小組. “電腦用漢字粤語拼音表”. 2020年3月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年2月11日閲覧。
  4. ^ 粤語審音配詞字庫”. 人文電算研究中心. 2011年2月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年4月25日閲覧。
  5. ^ 粤語音韻集成”. 人文電算研究中心. 2019年2月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年9月18日閲覧。
  6. ^ 黄錫凌粤音韻彙電子版”. 人文電算研究中心. 2019年2月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年9月18日閲覧。
  7. ^ 調値 55 は、「超平」と呼ばれることがある(本来の声調 (中・低調) から高平変調したものを含む)。(千島英一. 標準広東語同音字表. 東方書店. p. 16. ISBN 978-4-497-91317-3 
  8. ^ 入声の中には、一部、陰上と同じ調値の高昇変調(35)を取る「超入」も存在する。また、入声以外の本来の声調(中・低調)から高昇変調したものは「超上」と呼ばれることがある。(千島英一. 標準広東語同音字表. 東方書店. p. 11,16. ISBN 978-4-497-91317-3 

外部リンク