富士山における鉄道構想(ふじさんにおけるてつどうこうそう)は、富士山周辺での登山鉄道の構想である。
富士山では、過去にケーブルカー計画などの構想があったが断念され、1960年代にも本格的な構想がなされていたが同様に断念しており、構想が繰り返されている。
特に富士急行(本社:山梨県富士吉田市)が富士山における鉄道構想に意欲的であり、ほとんどの構想に関わりがある。
富士急行が、富士山鉄道構想を発表した。富士山に直接掘削機で穴を開け、5合目 - 8合目間(山麓線、定員175人)及び8合目 - 頂上間(山上線、定員120人)のケーブルカーを建設するというものであった。
そして1963年(昭和38年)に「富士山地下鋼索鉄道」として申請された。ところが1974年(昭和49年)には申請取下を発表した。富士急行社長によれば、自然保護を重視し、諸般の情勢を考慮してとのことであった。
2008年(平成20年)11月、富士五湖観光連盟(会長:富士急行社長堀内光一郎)が富士山有料道路(富士スバルライン)に代わる富士山5合目へのアクセスとして打ち出した構想は、麓の有料道路ゲート付近に始発駅を設け、有料道路上に単線の線路を敷設して5合目ロータリーまでを結ぶものであった。観光客の散策のため、途中に4駅を設置する。建設費は600億円から800億円程度を見込んでいた。
2013年(平成25年)6月、富士山の世界文化遺産登録を受けて、富士急社長の堀内は富士山駅付近から、現行の富士スバルラインの敷地などを通って、富士山5合目までを結ぶ約30キロの鉄道路線を観光用鉄道として新たに敷設し、鉄道の開設に伴い現行の道路は廃棄するという構想を発表した。スバルラインは急斜面だが、鉄道の場合、通常車両で運行が可能という。これに対して、当時の山梨県知事の横内正明も「道路よりも環境への負荷が少なく冬も5合目に行ける利点がある。長期戦略として検討の余地はある。道路にはこだわらない」と発言した。
横内正明の後任である後藤斎は、2018年(平成30年)9月25日に検討会の設置を示唆し、その後任の長崎幸太郎も、知事就任前の会見で勉強会を設けることを示唆していることなど、県側としても前向きとなっている。2019年(令和元年)5月22日、長崎幸太郎が、2年後をめどにルート案などの構想を発表する考えを示した。一方、富士吉田市長の堀内茂は、「技術的に困難」「安全性に問題がある」とし、反対または慎重な姿勢をとった。
富士山登山鉄道が開業した後、東日本旅客鉄道(JR東日本)や富士急行が東京都心方面から5合目までの直通列車(成田エクスプレスや富士回遊)の運行を検討しているとも報じられた。
こうした経緯の後、山梨県などは「富士山登山鉄道構想検討会」を発足させ、2019年(令和元年)7月29日以降、会合を重ねた。会長を御手洗冨士夫経団連名誉会長、理事長は山東昭子参議院議長が務め、富士スバルライン上に次世代型路面電車(LRT)路線を敷設する方式が最も優位性があるとの素案を、2020年(令和2年)1月30日に了承している。
国際連合教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の諮問機関である国際記念物遺跡会議(ICOMOS、イコモス)は本構想について、「富士山の来訪者管理や環境悪化に関する多くの課題を解決する統合的なアプローチとなりうる」と評価しつつも、「環境破壊につながる」と富士北麓地域にて反対運動が起きていることを挙げた上で「多くの利害関係者の支持を得る作業が必要」との通知を日本政府に送付していたことが2022年10月に報じられた。