岡田 英弘 (おかだ ひでひろ、1931年 (昭和6年)1月24日 - 2017年 (平成29年)5月25日 )は、日本 の東洋史 学者。東京外国語大学 名誉教授 。東洋文庫 専任研究員。専攻は満洲 史・モンゴル 史であるが、中国・日本史 論についての研究・著作もある。
経歴
1931年 (昭和6年)、東京市 本郷区 (現・東京都 文京区 )曙町に生まれた 。戦時下の1943年 、旧制暁星中学校 入学 。1946年 、旧制成蹊高等学校 尋常科へ転入 。 1947年 、 旧制成蹊高等学校高等科理科乙類入学 。1950年 、旧制成蹊高等学校高等科理科乙類を卒業した 。1953年 、東京大学 文学部 東洋史 学科を卒業 。その後は同大学大学院に進み、1958年 東京大学大学院博士課程を満期退学した 。
1959年 から1961年 まで、フルブライト奨学金 を得てアメリカ合衆国シアトル 市に所在するワシントン大学 に留学。ニコラス・ポッペ らの下で学んだ 。1963年 、ドイツ連邦共和国 ボン大学 東洋研究所客員研究員となった 。
1966年 、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 助教授に就任 。1968年 、ワシントン大学客員副教授となった( - 1971年 ) 。1973年 、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 教授に昇進 。1993年 、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所を定年退官し、名誉教授となった。その後は1996年 より 常磐大学 国際学部 教授として教鞭をとった(〜2000年 )。2002年 、国際モンゴル学会 名誉会員に選出された。
2017年 5月25日、心不全 のため死去 。
受賞・栄典
家族・親族
研究内容・業績
中国史 、古代日本史 、韓国史 を専門とした。日本の中国史学会に異を唱えた研究、発言、著作がある。
歴史を理論として確立しているのはヘロドトス に始まるヨーロッパ史と司馬遷 らに始まる中国史だけであり、両者の歴史観はまったく原理を異にしていること、そしてその他の地域の歴史は両者いずれかの歴史観による焼き直しであることを主張した。この観点から、両者を単に融合して世界史を記述するのではなく、両者を止揚・昇華させた新たな原理による世界史を構築する必要性を説き、世界史の始まりをモンゴル帝国 によるヨーロッパ文明・中国文明の接触に求めている 。
しばしば著作内で「三国時代 に漢族 は激減し、ほぼ絶滅した」と主張している 。
朝鮮半島について、歴史学的には「韓半島」と呼ぶのが正しいとしている。韓国起源説 については、「もともと、日本 は未開野蛮 の国で、朝鮮 がすべて、いいことを教えてやったんだと思いたい。極端な話が、日本の歌謡曲 だって、実は朝鮮人 が発明 して、それを有名な音楽家 である古賀政男 が朝鮮に来て、それを聞いて帰って、つまり盗んで、自分が作曲したと言って発表した。それが日本の歌謡曲の起こりだ、という解釈まである。これは国民的な信念なのだ。このようなことに至るまで、とにかく、自分たちが兄 で、日本は弟 だ、という信念が、韓国人 のアイデンティティー の基礎にあって、これを否定されたら、韓国人でいられない」と評している 。
言論・評価
岡田は「私は“群れる”ことができない性質なのを痛感しつつ、学者人生を過ごしてきた。学界では孤立したが、それを苦痛にも、寂しいとも思ったことがない。強がりではなく、どうも私にはそうした神経がないらしい。周囲を恨んだこともない。学界という狭い世界ではなく、メディアに広く求められ認められたことで、私はやりたい学問ができ、主張したいことを主張してこられた」と述べている 。
…去年、岡田英弘の歴史書を読みました。そのあとで、私はこの人物の傾向と立ち位置を理解しました。彼は日本の伝統的な史学に対し懐疑を示し、日本史学界から“蔑視派”と呼ばれています。彼は第三世代(
白鳥庫吉 、
和田清 につぐ?)の“掌門人(学派のトップ)”です。モンゴル史、ヨーロッパと中国の間の地域に対する
ミクロ 的な調査が素晴らしく、民族言語学に対しても非常に深い技術と知識をもっており、とくに語根学に長けています。彼は1931年生まれで、91年に発表した本で、史学界で名を成しました。これは彼が初めて
マクロ な視点で書いた本で、それまではミクロ視点の研究をやっていたのです。私はまずミクロ視点で研究してこそ、ミクロからマクロ視点に昇華できるのだと思います。大量のミクロ研究が基礎にあってまさにマクロ的にできるのです。
杉山清彦 も、岡田のことを「モンゴル史・満洲史に軸足をおきながら、ひろく中国史・日本古代史などさまざまな分野で発言をつづけており、その卓抜した史眼には定評がある」として、岡田の著書『中国文明の歴史 』(講談社現代新書 、2004年 )を、「少なくとも学界では正当な評価を受けているとは言いがたいと思われる。たしかに史料的根拠や論証 は、おそらく、なかば意図的に省略されているが、さまざまな専門の研究者は、それぞれおのが分野において氏の投げたボールを受け止めるべきではなかろうか」と評している 。
著作
単著
著作集
共編著
訳書
『舊滿洲檔 天聰九年』 1,2巻、神田信夫、松村潤、岡田英弘 譯註、東洋文庫〈東洋文庫叢刊 第18〉、1972年3月-1975年3月。NCID BN09365886 。
フイリップス, E.D.『モンゴル史 チンギス・ハーンとその後継者たち』学生社 、1976年8月。ISBN 978-4-311-31017-1 。
Phillips, Eustace Dockray; 岡田, 英弘; Gomborincin (1983) (モンゴル語), 蒙古史 成吉思汗与他的继承者们 , NCID BA57945965 - 注記:本书根据东京学生社出版的1976年8月第1版第1次印刷版本翻译出版。
오카다, 히데히로 이진복訳 (2002-05-27), 세계사의 탄생 , 황금가지, ISBN 89-8273-458-9 , NCID BA74000576 - 注記:原著: 岡田 (1992) 。
Ssanang Ssetsen, Chungtaidschi 著、岡田英弘 訳『蒙古源流』刀水書房 、2004年10月。ISBN 978-4-88708-243-4 。
岡田英弘 陳心慧、羅盛吉訳 (2016-08) (中国語), 從蒙古到大清 遊牧帝國的崛起與承續 , 歴史,世界史, 臺灣: 臺灣商務印書館, ISBN 978-957-05-3053-7 , NCID BB2342047X - 注記:岡田 (2010) の中国語訳。
Окада, Хидэхиро (2017) (モンゴル語), Дэлхийн түүх мэндэлсэн нь = 世界史の誕生 , Injinash хэвлэлийн Газар, ISBN 9789996288548 , NCID BB23606354 - 『世界史の誕生 』のモンゴル語訳。
岡田英弘 陳心慧訳 (2017-12) (中国語), 中國文明的歴史 非漢中心史觀的建構 , 臺灣: 八旗文化/遠足文化事業, ISBN 978-986-9556-14-9 , NCID BB26473665 , https://de-de.facebook.com/gusapublishing/posts/1424753350956330/ - 『中国文明の歴史 』の中国語訳。
Окада, Хидэхиро (2018) (モンゴル語), Энх-Амгалан Хааны захидлууд , Соёмбо принтинг, ISBN 9789997824929 , NCID BB28907948 - 『康煕帝の手紙 』のモンゴル語訳。
監修
その他
脚注
参考文献
外部リンク